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日本私立大学連盟
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会長挨拶

 

多様性とイノベーションを紡ぐ「建学の精神」の未来へ

はじめに:激動の時代における高等教育の使命

私たちの社会は今、かつてないスピードで変革を遂げています。生成AIをはじめとするデジタル技術の爆発的な進化、地球規模の気候変動やエネルギー問題への対応、そして緊迫化する国際情勢など、私たちは予測困難で不確実な時代の真っ只中にあります。

このような激動の時代において、次代を担う人材を育成し、新たな知を創造する「高等教育」の果たすべき役割は、これまで以上に大きくなっています。とりわけ、日本の4年制大学に通う学生の約8割を受け入れている私立大学への期待と責務は、質・量の両面において極めて重大であると認識しております。

日本私立大学連盟は、昭和26年(1951年)の創立以来、日本の私立大学の振興と高等教育の発展を目指し、歩みを進めてまいりました。現在、加盟する各大学は、それぞれの歴史と地域特性を活かしながら、個性豊かな教育・研究活動を展開しています。また、学生や教職員のジェンダー、国籍、文化的背景などにおける多様性(ダイバーシティ)も着実に高めてまいりました。この「多様性」こそが、日本の知的基盤を支え、社会の活力源となっていくと確信しております。

日本を取り巻く現状と私立大学の「三つの挑戦」

現在、日本の高等教育を取り巻く環境は、未曾有の厳しい局面を迎えています。その中で私立大学が果たすべき挑戦は、以下の三点に集約されます。

  1. ① 少子化を乗り越える「知の総和」へのパラダイムシフト

    第一の、そして最大の課題は、急速に進展する少子化です。これは国力や地域社会の衰退、ひいては日本の知的イノベーション力の低下に直結する構造的な問題です。中央教育審議会は、2025年2月に答申「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」を取りまとめました。「国民の数」と「国民の平均的な知」の掛け算を「知の総和(国力)」と定義するとき、少子化が進む日本においてこれを維持・向上させるためには、「一人ひとりの知」を底上げしていく以外にありません。

    2025年に約109万人であった日本の18歳人口は、2040年には約74万人へと「約32%」減少します。この少子化に抗って国の「知の総和」を維持・向上させるためには、大学教育を通じて学生一人ひとりの能力を最低でも32%以上向上させることが求められているのです。大学生の約8割が在籍する、すなわちボリュームゾーンを支える私立大学群こそが、この教育の質的向上を牽引しなければ、日本の未来はありません。

    さらに言えば、諸外国が加速的に知力を伸ばしている今、従来の教育の延長線上では世界との格差は広がる一方です。私立大学には今、持続可能な高等教育モデルへのパラダイムシフト、すなわち「大学の在り方そのものに対するイノベーション」が迫られています。

  2. ② 社会構造の変化に伴う「教育ニーズの多様化」への対応

    第二の挑戦は、社会構造の急激な変化に伴う学びの多様化です。若年層に対する初期教育としての大学教育にとどまらず、社会人のリカレント教育やリスキリング、シニア層の生涯学習など、大学が向き合うべき対象は「全世代」へと拡大しています。エッセンシャルワーカーの育成など、社会基盤形成への貢献も不可欠です。さらには、国際情勢の不安定化によって、より安全な国での学びを求める留学生は増えていきます。国際的な競争力と協調の双方を両立させる、真のグローバル化への対応が求められています。

  3. ③ 構造的格差を解消する「財政運営基盤」の整備

    第三の挑戦は、教育と研究におけるパラダイムシフトを可能とする財政運営基盤の確立です。

    私立大学が全学部学生の約8割の教育を担っているにもかかわらず、私学助成をはじめとする公的財政支援の割合は、諸外国や国公立大学と比較して依然として低い水準に留まっています。多くの私立大学生に学納金という受益者負担を求める一方で、2割ちょっとの国公立大学に対して多額の教育公費が投入されている現在の構造は、高等教育の質的転換に必要な「公平な競争環境」とは言えず、真の「教育の機会均等」という観点からも看過できない課題です。

    社会全体で教育費をどう支えるか、抜本的な制度設計の見直しが必要です。

私学の強み:「建学の精神」という羅針盤

こうした複合的な挑戦を乗り越えるために、私学が立ち返るべき原点は、各大学が脈々と受け継いできた「建学の精神」に他なりません。国公立大学が設置者の意図や国の政策に一定の方向性を課される傾向があるのに対し、私立大学は、独自の理念や地域・産業界の強い要請から誕生しました。そこには、「どのような人間を育てたいか」「どのような社会を築きたいか」という、固有の、そして高い志が存在します。

画一的な正解が存在しない現代社会において、この「建学の精神」に基づく多様な教育アプローチこそが、私たちの最大の強みです。

  • 地域社会に深く根ざし、地方創生の核となる人材を育てる大学
  • 最先端の学際的研究で、世界をリードする大学
  • リベラルアーツ教育を通じて、偏見から解き放たれ、自律的に思考するリーダーを育てる大学

この多様性があるからこそ、社会の複雑なニーズに応えることができ、予期せぬ変化にも柔軟に対応できるイノベーションが生まれるのです。私たちは、各校の独自の特色をより一層鮮明にし、「選ばれ、社会に貢献する大学」としての価値を磨き上げなければなりません。

結びに

大学の真の価値は、そこで学ぶ学生たちが、未来に対してどれだけの希望と可能性を見出せるかによって測られます。

日本私立大学連盟は、加盟校の緊密な連携のもと、教育・研究の質の高度化、多様な教育ニーズへの対応、そして財政運営基盤の強化に邁進してまいります。並行して、国公私立という設置形態の枠を超えた、高等教育全体のパラダイムシフトを促す政策提言を力強く発信してまいります。

加盟校が互いの建学の精神を尊重しつつ、共通の課題に対しては知恵を絞り合い、結束して立ち向かう。この「共創」の実践こそが、困難な時代を切り拓くエンジンになると信じております。

皆様のより一層のご理解、ご支援、そして積極的なご参画を心よりお願い申し上げ、会長からの挨拶とさせていただきます。

一般社団法人日本私立大学連盟
  会長 伊藤公平(慶應義塾長)