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令和4年度第1回学長会議「大学ガバナンス改革と大学教育の未来」(8/24)開催報告

2022年10月07日

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【会員法人関係者のみ】

  
  
 
 
     開催概要
 
  テーマ 大学ガバナンス改革と大学教育の未来
  開催日時 2022年8月24日(水)14:00~17:00
  開催場所 オンライン(Zoom)
  参加対象 学長会議登録者(私大連会員法人設置大学の学長等)
 ※副学長に該当する役職者の参加も可能。
 ※講演は、どなたでも傍聴可能。
  参加者数 101大学135名
   プログラム  基調講演「これからの私立大学のガバナンスについて」
  田中 愛治 日本私立大学連盟会長・早稲田大学総長
講演「令和4年度大学設置基準等の改正について」
  中村 真太郎 文部科学省高等教育局大学振興課課長補佐     
グループ討議
  テーマ1.ガバナンス改革への対応
  テーマ2.大学設置基準の改正
  テーマ3.デジタルを活用した大学教育
  テーマ4.総合知の創出を目指す文理横断教育
全体討議

開催要項

 
 
 
 私立大学の多くはこれまでも、それぞれの建学の精神に基づき適切なガバナンスを行ってまいりましたが、今般、学校法人制度改革特別委員会の議論を経まして、社会に向けてより一層明確に、大学運営の自立性や公共性、信頼性・透明性、継続性を提示し、教育研究の質の向上に努め、未来社会に求めらている学術の発展と人材育成に貢献することを打ち出していかなければならないと思います。

 この度の学長会議によって、私共が改めて大学ガバナンスについて理解を共有し、大学の教育研究の未来を語り合い、そして確認できましたことは、ご参加の学長の皆様がそれぞれの大学の未来を描く上での一助となることを願っております。
 

【学長会議幹事会委員 日比野 英子(京都橘大学・大学長)】
 

 
 
 
 
     基調講演「これからの私立大学のガバナンスについて」
 (田中 愛治 日本私立大学連盟会長・早稲田大学総長)
 

 一部の私立大学で理事長もしくは理事会が暴走し、法令違反・コンプライアンス違反が行われたことを背景として、私立大学のガバナンスは社会から大きな注目を集め、積極的な改革が求められています。

 私立大学には独自の建学の精神や法人運営の形があるとはいえ、公的資金をもらって運営している以上、ガバナンスのあり方を今一度見つめ直す必要があります。このような状況下、文部科学行政の関係者の間で検討が重ねられ、閣議決定に基づいて設置された「学校法人ガバナンス改革会議」が2021年12月に最終報告をまとめましたが、私立大学の教育研究の根幹を揺るがしかねない問題点がいくつもあり、学校法人にとって最も重要な学生や教育の提供を念頭に置いた改革が必要だと改めて感じました。

 本日は、「学校法人ガバナンス改革会議」の後継機関であり、私も委員の1人として参画した「学校法人制度改革特別委員会」での議論と2022年3月に同委員会がとりまとめた報告書の内容を踏まえ、私が考える私立大学ガバナンスの理想像や、今後の私立大学のあり方について述べたいと思います。
 

 
     求められる私立大学ガバナンスの変革
 

 2021年12月にとりまとめられた「学校法人ガバナンス改革会議」の最終報告では、評議員会を学校法人の最高監督・議決機関とする決定がなされたほか、評議員会のさまざまな権限について提案が出されました。しかし、私はこの提案に、学校法人最大の受益者である学生について、並びに学校法人の最大の使命である教育の提供について、それぞれ一言も触れられていないことが最大の欠陥ではないかと考えました。そこで、私立大学にとって最も重要な使命である、学生に教育プログラムを提供し、学習効果が高まるような教育環境を提供することを念頭に、私立大学ガバナンスの理想像について考えたいと思います。

 

   私立大学ガバナンスの理想像
 

 

 こちらは、私が提案する私立大学のガバナンスの理想像です。まず監事、評議員会、理事会が三者対等にあり、さらに理事会の下に学部・研究科があり、学生がいるということになります。この中で評議員会は、大所高所から当該大学をモニター(監視)し、理事会に対し、適切にアドバイスする必要があります。評議員会の多くのメンバーは、教職員ではなく卒業生等を含む外部の方がその任に当たることから、同時に理事会のあり方を監視することもできます。また理事会は、教育研究に関する方針を定め、経営上の実行可能性を見極め、意思決定を行い、政策の実施も担います。

 通常、評議員会と理事会は協調しながら最適な大学運営を進めていきます。しかし、どちらかが規範を逸脱した行為を行った場合には、互いに監視する役割を担います。また、監査機能を持つ監事の方々が、評議員会と理事会の双方を監視する役割を担います。では、どのように監視するのかを、それぞれの事例から見ていきます。

理事長、理事の一部もしくは理事会に規範を逸脱した行為があった場合
 ①監事が理事会に警告し、理事会自らが修正する。
 ②理事会が自浄機能を発揮できない場合には、監事の勧告により、評議員会が理事長もしくは特定の理事を解任できるようにする。

評議員会議長もしくは評議員の一部に規範を逸脱した行為があった場合
 ①監事が評議員会に警告し、評議員会自らが修正する。
 ②評議員会が自浄機能を発揮できない場合には、監事の勧告により、理事会が評議員会議長もしくは特定の評議員を解任できるようにする。

 このように相互に監視することによって、セーフティバルブ(安全弁)となる仕組みが望ましいと考えます。「学校法人ガバナンス改革会議」の提案には、このような権力の暴走を止める仕組みがありません。最高議決権を監事、理事会、評議員会のいずれか一つの機関に与えてしまうと、その機関の長(もしくは構成員)は自分(もしくは自分たち)がすべてを決定できると考えてしまう可能性が高くなりますので、このような権力の暴走を止める安全弁が必要だと考えております。

 

   理事会と教学部門の関係
 

 私立大学には、(A)理事長と学長が分かれている場合と、(B)一致している場合がありますので、それぞれ説明します。

A.理事長と学長が分かれている場合
 現行の私立学校法では、理事会は私立大学の最高議決機関であり、学校法人の大きな方針に関する意思決定をする必要があることから、理事会は教育・研究上の方向性を示すべきです。一方、教学上の最高意思決定機関は、学部長会議などの教育と研究に精通したメンバーから構成される会議であるべきです。その理由は、どのような教育プログラムが重要か、どのような研究がその大学に必要かは、教学組織のメンバーが判断すべきだからです。そのため理事会は、学部長会議などの教学会議の提案を受けて、教育上の具体的な政策についての財務的な裏付けを行い、最終決定をすることが果たすべき役割となります。

B.理事長と学長が一致している場合
 理事会は教学事項(教育研究上の事項)についても、最高議決機関として、具体的な施策に関する意思決定を行います。ただし、理事会は提案を行うものの、教学上の具体的な政策に関しては、学部長会議などの教学会議を最高議決機関として、その承認を得ることが必要であると考えます。これにより、学問の独立、教育の独立を守ることができます。

 A、Bどちらの場合においても、理事会は単に経営上の視点からだけではなく、学生を育てるという使命を最重要課題として認識し、意思決定をすべきです。

 

   アメリカの大学の事例
 

 アメリカのほとんどの大学では現在、学部に精通していない学長を選ぶことは考えにくくなっています。大学の法人化が重視され、ビジネスの世界から学長を呼ぶケースが目立った時期もあったものの、そのトレンドは終わりました。イェール大学では以前、弁護士出身の方を学長に招いたものの短い期間で解任されてしまいました。大学のあり方を学ぼうとせず、関心もなかったとして、教授陣と対立してしまったことが原因だったとされます。また、ハーバード大学でも、連邦政府の高官を務めた方が学長になったものの、教授陣と対立し、早期に解任されています。その方は経済学者であり、長く政界にいたものの、学長としての力を発揮することはありませんでした。

 上記2つの事例から、大学で経営方針を決める際に、どの教育、どの研究に力を入れるべきなのかを判断できる者が大学のリーダーとなっていくことが必要だということが言えるのではないでしょうか。

 

   私立大学のガバナンスを考えるヒント
 

 私立大学のガバナンスを考える上で、企業経営の基本的な精神からも大学経営への示唆を得られる場合もあるのではないかと思います。衣料品のブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの社長、柳井正さんはその著書『経営者になるためのノート』で、経営に必要な力として次の4つの力を示しています。

 「変革する力」
 「儲ける力」
 「チームを作る力」
 「理想を追求する力」

 「変革する力」とは、常識にとらわれないことだそうです。「儲ける力」とは、株主ではなく顧客のためにあるということで、大学に置き換えると、大学は学生のためにあり、評議員や校友のためにあるのではないということです。学生が満足すれば、評議員や校友も満足するでしょうが、逆ではありません。「チームを作る力」とは、人間同士の信頼関係を作るということだそうです。「理想を追求する力」とは、使命感を持つことと言えます。社会に貢献できる企業だけが生き残れるという信念で決定し行動したそうで、これを大学に置き換えれば、社会に貢献できる大学だけが生き残れるということです。
 

 
     私立大学が解決すべき課題
 

 日本の私立大学の新たな使命を考えるとき、日本の大学生の8割は私立大学で学んでおり、大学卒業者の過半数に対して重大な責務を負っていることを念頭に置く必要があります。日本の私立大学は、どうすれば日本社会の将来の力となる学生・卒業生を育み、世界人類に貢献する社会人を生み出し続けられるのでしょうか。日本の私立大学が直面している危機は、次の2つであると考えます。

 中期課題:国際競争力の低下
 長期課題:18歳人口の長期的な減少傾向
 

IMD「世界競争力年鑑」日本の総合順位の推移


 日本の国際競争力は1990年、世界ナンバーワンでしたが、バブル経済崩壊後に衰退し、2020年には34位まで落ちてしまいました。この最大の原因は、世界的にデジタルトランスフォーメーションが進む中、日本はデジタル化が遅れていることだと考えます。私は、デジタル化を進めるための重要な根幹として、文理の連携が必要であると考えます。

 

   文理の壁
 

 デジタル化の遅れの最大の原因は、日本の高等学校における教育、ひいては大学における教育が文理の壁を隔てていることではないでしょうか。典型的な例を一つ挙げれば、新型コロナウイルスの重症患者の緊急搬送を行っているときに、受け入れ可能な病院を探して電話を5時間以上、ときには16時間もかけ続けるということもあったと聞きます。もし、大都市圏の病院の重症病床数と一般病床数をビッグデータに入れてAIがコントロールする仕組みをつくり、救急車の位置情報をGPSで表示させれば、AIは5分程度の時間内に、その救急車の位置から1時間以内に行ける距離に何床の空きがどの病院にあるかを示すことができたはずです。なぜこれができなかったのでしょうか。

 それは、保健センターや市役所、厚生労働省で政策形成や意思決定に従事している職員が、ほとんどすべて文系の方だからだと考えられます。文系の職員は、科学技術で何が可能であるかをよく理解しておらず、反対に理系の職員は、人々の思考や行動パターン、社会の中で人々がどう考え、どう行動するのかということへの理解が足りていないのではないでしょうか。

 

   大学入試制度の弊害
 

 この要因は、日本の大学入試の仕組みにあります。日本では入試のため、生徒は高校1年の終わりに文系か理系かを決めてしまいます。そのために文系の生徒は理系の科目を「捨て」てしまい、反対に理系の生徒は文系の科目を「捨て」てしまいます。さらに、大学入学後の教育においても、文系と理系の学生は4年間全く異なった教育を受けることになります。

 文系の学生が本格的な物理・化学・数学などを理解して論文発表することはできないでしょうし、理系の学生が政治学や哲学、経済学などで論文発表することはできないでしょう。しかし、文系の学生が理系の考え方を理解し、理系の学生も社会における人々の考え方や行動を理解することは可能だろうと思います。こういった、文理のインターフェースを構築する、つまり良き理解者・賢い利用者になることは可能だと思います。これらの仕組みを構築するための教育環境を整えていくことが必要なのです。
 

 
     大学の質を高める教育環境
 

 大学の質を高める教育環境とはどういうものが考えられるでしょうか。早稲田大学の事例をもとに、考えていきたいと思います。

 

   基盤教育の整備
 

 早稲田大学では、世界で輝く学生を育てることを目指しており「グローバルエデュケーションセンター」という、全学の学部の壁を取り払った教育を提供する機関を2013年につくりました。このセンターを開設するために、最も力を入れたのは「基盤教育」であり、その整備です。基盤教育の整備にあたっては、次の2つのアカデミック・ツールに重点を置き、さらにこのツールを身に付けるため、5つの分野で基盤教育を実施しています。

<アカデミック・ツールの2つの目的>
 ・大学で学問を学ぶために必須のアカデミック・ツール
 ・社会に出ても知的職業に就いた際に必須のアカデミック・ツール

<基盤教育>
 1.日本語のアカデミック・ライティング
 2.英語の発話とアカデミック・ライティング
 3.数学的思考
 4.統計学的思考→データ科学入門
 5.情報科学基礎(IT、情報セキュリティ、AI入門)

 1つ目は、日本語を母語とする学生にアカデミック・ライティングを教える、つまり日本語を論理的に書く方法を教えるということです。2つ目は、英語の発話を重視しており、1対4でネイティブスピーカー、もしくはバイリンガルのインストラクターが週2回、発音の練習をさせるということを基礎に置きます。さらに、英語を母語としない学生に英語を論理的に書くための文章作成方法を教えています。3つ目は数学的な論理的思考で、4つ目のデータ科学入門では、文系の学生がデータ科学の 基礎を学びます。5つ目の情報科学基礎は全学生が学んでいます。これらの教育を進めることで、文系理系を問わず、エビデンスベーストな(データなどの根拠に基づく)議論をする方法論を学修できると考えています。

 

   教育プログラムのグローバル化

 2012年の日本の18歳人口は120万人、大学進学者数はその50%にあたる約60万人でしたが、2050年には18歳人口は80万人まで減り、学生数は約3分の1程度が減ってしまうのではないかと予測されています。大学進学率が5割のままであれば、約40万人しか大学に進学しないということになり、日本社会において高等教育を受ける人の数が激減するということを示しています。このままでは、日本の国際競争力がさらに衰退することが懸念されます。

 その解決策として考えられるのは、海外の優秀な学生に日本の私立大学へ入学してもらい、育てることです。そのためには英語で授業をする必要があります。また彼らが卒業後、日本に残るように教育する必要もあります。自国へ帰るか他国に行くのでは、日本の知的競争力に貢献しません。そのため、海外から来る学生がしっかり日本文化を学び日本を選ぶためには、日本語教育も必要になります。

 早稲田大学の場合には、「日本語教育研究センター」があり、英語による学位プログラムの学生は、できる限り同センターで日本語の初級から学んでもらうようにしています。入学前には日本語を理解できていなくても構いませんが、入学後には日本語を学んでもらうことを奨励しています。このように、海外からの学生に日本語を学んでもらうための体制も必要になってくるのではないでしょうか。

 また、日本で生まれ育った若者の大学進学率を上げる必要もあると思います。日本の進学率は約50%ですが、イギリスなどは70%を超える進学率を有します。日本の国際競争力は、高等教育を受ける人の数が多くならなければ高まることはないと考えます。大学進学率を高めるとともに、大学がより質の高い教育を提供することで、日本の国際社会における貢献力を維持向上させることができるのではないでしょうか。

 ただ早稲田大学では、長期課題である18歳人口の長期的な減少傾向への対応に関しては、中期課題である国際競争力の低下への対応ほど具体的な施策をまだ十分には用意できていないのが実情です。今後、早稲田大学を含めた各私立大学は、これらの課題への対応が必要であることを踏まえた上で、文理の連携を図るインターフェースを構築できるような教育環境を提供するべきだと考えています。同時に、私立大学の使命とは何であるかを念頭にガバナンスのあり方を考えることも必要だと考えております。

 ご清聴どうもありがとうございました。  

 
 
     講演「令和4年度大学設置基準等の改正について」
 (中村 真太郎 文部科学省高等教育局大学振興課課長補佐)
 

 平成30年に公表された中央教育審議会の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」では、予測不可能な時代にあって、何を学び、身に付けることができるのかを中軸に据えた、学修者本位の教育への転換が打ち出されるとともに、高等教育の質保証システムの再考が求められ、大学設置基準についても抜本的な見直しが必要とされました。

 これを受け、令和2年6月以降、中央教育審議会の大学分科会のもとに設置された質保証システム部会において検討がなされ、令和4年3月に審議まとめが取りまとめられたところです。

 審議まとめでは今回の改正に当たり重要な指摘が様々なされておりますが、主に大学教育の質保証の単位は学位プログラムであること、学位プログラムは3つのポリシーに基づいて編成されるものであること、各大学の内部質保証は学位プログラムを基礎として自ら行われるものであること、そして内部質保証を通じて大学の教育研究活動が不断に検証、見直されていくべきであることが示されました。

 今回の大学設置基準の改正は、これらの考え方を根幹としています。資料13ページの下半分に改正の全体像を示しておりますが、本日はこの中央部分の上段にある基幹教員制度についてご説明していきます。

 
     基幹教員とは
 

 基幹教員制度についてですが、現行の専任教員は基準上、「一の大学に限り専任教員となる」「専ら当該大学における教育研究に従事する」としか定められておらず、各大学にとって専任教員としての登用は慎重に判断せざるを得ない面があるという課題があります。そのため、審議まとめでは専任教員の概念を基幹教員と改めるなどの提言がなされております。

 今回の設置基準の見直しでは、従前の設置認可審査における専任教員の考え方なども踏まえながら、基幹教員としての定義を明確化するとともに、必要最低教員数の算定においては4分の1の範囲内で複数の大学・学部での算入も可能とするなどを規定しております。このことにより、教員が十分養成されていない成長分野などにおいて民間企業からの実務家教員の登用促進や複数大学等でのクロスアポイントメント等の進展が期待されるところです。

 従来の専任教員と基幹教員の違いについてですが、これまでの専任教員に求めてきた性質を踏まえつつ、冒頭ご説明しました今回の改正の基本理念に沿って、学位プログラムに責任を持つ教員としての定義を明確化するものです。このため従前から学位プログラムに責任を有する専任教員は引き続き、設置基準上の基幹教員として位置づけられるとともに、一の大学に限りとしている現行規定を見直し、複数の大学・学部でも必要最低教員数の4分の1の範囲内で算入可能となります。
 


 具体的な基幹教員の定義ですが、資料27ページの上段にお示しした①及び②を満たす教員となります。まず①教育課程の編成その他の学部の運営について責任を担う教員です。具体的には教授会や教務委員会等の会議に参画する方などを想定しております。

 これに加えて②のAまたはBの要件を満たすことが必要となります。Aは、当該学部の教育課程における主要授業科目を担当する教員であって、専ら当該大学の教育研究に従事する者です。Bは当該学部の教育課程における年間8単位以上の授業科目を担当する教員であり、こちらは当該大学に専ら従事するかどうかは問われません。

 ①及び②の両方の要件を満たす場合に基幹教員となりますが、他方、設置基準の別表においては必要最低教員数が定められており、大学は、この必要最低教員数以上の教員を有することが求められます。

 
     基幹教員の必要最低教員数への算入
 
 

 必要最低教員数への算入にあたって、それぞれの基幹教員がいずれの要件を満たしているかにより算入方法が決まります。まず教育課程の編成等に責任を担い専ら当該大学に従事する者であって主要授業科目を担当する、資料27ページ左下の青い部分に該当する教員と、年間8単位以上の授業科目を担当する、1つ上の緑色の部分に該当する教員については、青色の破線矢印の通り、いずれかの別表に1だけ算入することができます。

 次に教育課程の編成等に責任を担い年間8単位以上の授業科目を担当する、先ほどの緑色の部分に該当する教員と、もう一つ上の黄色の部分に該当する教員、オレンジ色の枠で囲っている部分です。これらについては、専ら当該大学に従事するかどうかを問わず、オレンジ色の矢印の通り、複数大学・学部等で算入が可能となります。

 また、必要最低教員数の4分の3以上は、専ら当該大学の教育研究に従事する基幹教員である必要がありますが、4分の1以下であれば、複数の大学・学部において、基幹教員として算入することができます。なお、学部の収容定員に着目した別表第一と大学全体の収容定員に着目した別表第二の性質は異なることから、別表第一で算入した教員を別表第二に重複して算入することはできません。

 

   複数機関間の場合
 

 

 資料34ページに沿って、具体的なケースをご説明いたします。複数機関に採用される教員の場合ですが、このうちのケース1では、A大学経済学部において教育課程の編成等に責任を有し、主要授業科目を担当する、専ら当該大学に従事する基幹教員。これはA大学経済学部に係る別表第一に定める、必要最低教員数の4分の3以上の専ら従事する教員の数に算入することができます。

 ケース2のA大学経済学部において主要授業科目を担当する、専ら当該大学に従事する基幹教員について、B大学商学部でも教育課程の編成等に責任を有し、年間8単位以上の授業科目を担当しているため、基幹教員になるわけですが、この教員の場合、A大学経済学部の必要最低教員数のうち4分の3以上の専ら従事する教員の数に算入することができ、かつB大学商学部の必要最低教員数のうち4分の1以内の複数算入枠の方に算入することもできます。

 次にケース3。A大学経済学部において主要科目を担当する、専ら当該大学に従事する基幹教員が年間8単位以上の授業科目を担当しており、かつ、B大学商学部でも教育課程の編成等に責任を有し、年間8単位以上の授業科目を担当する基幹教員であるという場合です。このケースでは、A大学経済学部の必要最低教員数のうちの4分の3以上の専ら従事する教員の数に算入するか、4分の1以内の複数算入枠に算入するかを選択できることになり、かつ、B大学商学部の必要最低教員数のうち4分の1以内の複数算入枠に算入することもできます。

 それからケース4。こちらは企業等に専ら従事し、いずれの大学にも専ら従事していない方をイメージしています。A大学経済学部において教育課程の編成等の責任を有し、年間8単位以上担当するとともに、B大学商学部でも教育課程の編成等に責任を有し、年間8単位以上の授業科目を担当しているということから、いずれについても基幹教員の要件を充足しています。この教員は、A大学経済学部の必要最低教員数のうち4分の1以内の複数算入枠に算入することができ、またB大学商学部の必要最低教員数のうち4分の1以内の複数算入枠に算入することができます。

 

   同一大学内の場合
 

 

 次に、資料35ページは同一大学内の場合です。こちらの場合、基本原則として同一大学内の一の学部に専ら従事する教員として基幹教員に算入した場合、仮に要件を満たしていたとしても他の学部で必要最低教員数に算入することはできません。

 具体的にケース1ですが、理学部の教育課程の編成等に責任を有し主要授業科目を担当する基幹教員について、農学部においては主要授業科目を担当するだけの場合は、そもそも要件を満たさないことから、農学部の基幹教員にはなり得ず、理学部における必要最低教員数のうち4分の3以上の専ら従事する教員の数にのみ算入することができます。

 ケース2。理学部の教育課程の編成等に責任を有し、主要授業科目を担当する基幹教員であって、かつ農学部の教育課程の編成等に責任を有し、主要授業科目を含む年間8単位以上の授業科目を担当する基幹教員という場合です。このケースでは理学部または農学部のいずれか一つの学部において、必要最低教員数の4分の3以上の専ら従事する教員に算入することができます。すなわち、理学部で専ら従事する教員として算入した場合、農学部では4分の1以内の複数算入枠に算入することは認められない点に注意が必要です。

 次にケース3ですが、理学部の教育課程の編成等に責任を有し、主要授業科目を含む年間8単位以上の授業科目を担当する基幹教員であって、かつ農学部の教育課程の編成等に責任を有し、主要授業科目も含む年間8単位以上の授業科目を担当する基幹教員という場合です。このケースでは、理学部または農学部のいずれか一つの学部において、必要最低教員数の4分の3以上の専ら従事する教員に算入することができます。もしくは理学部および農学部それぞれの4分の1以内の複数算入枠に算入することもできます。しかし、理学部または農学部の一方において専ら従事する教員に算入した場合には、他方の学部において4分の1以内の複数算入枠に算入することは認められません。
 

 
     質保証のための情報公表
 

 基幹教員制度に関しては、質保証システム部会や大学分科会において情報公表等による質保証について指摘がなされており、各大学において基幹教員に係る情報公表を積極的に行うことが求められております。公表する内容としては、基幹教員数や個々の基幹教員の学位、教育研究業績、経歴、所属、教育課程の編成その他の学部の運営等への参画状況、担当科目といったことが考えられます。こういった情報について、外部からのチェックや認証評価機関を通じた確認等が行われることにより、質の保証が図られることになります。
 

 
     施行時期と経過措置
 

 本改正については、令和4年9月7日の大学分科会でお認めいただいた場合、速やかに公布、施行を行う予定としております。その場合、令和6年度開設予定の設置認可申請の審査において、改正後の規定の適用が可能となるように、施行日は令和4年10月1日を想定しております。

 他方で既設の大学等における激変緩和の観点から、経過措置等を設ける予定としております。例えば、資料65ページ下方の1つ目の矢印にあるように、現に設置されている大学への基幹教員、校舎、研究室の規定の適用については、従前の例によることができることとし、大学の準備が整ってから適用することを可能としております。

 また2つ目の矢印にあるように、令和5年度開設の設置認可審査等については旧規定を適用し、3つ目の矢印にあるように、今年度申請する令和6年度開設の設置認可審査等は大学が新旧いずれの規定を適用するか選択できることとし、4つ目の矢印にあるように、令和7年度開設の設置認可審査等以降、新規定を一律適用することとしております。なお、改組は一部の学部・学科などで行う場合でも、大学全体に新たな規定が適用されることになります。
 

 
     事前質問への回答
 

 最後に、事前にいただいた質問について回答します。

Q1. 基幹教員を採用する際の給与のあり方や教員定数の扱いなどについてわかりやすい実例やシミュレーション等があれば紹介いただきたい
 

 A1. 本日配付した資料に基幹教員の算入方法などのシミュレーションを入れておりますので、ご参照ください。また、少し異なるかもしれませんが、資料38ページに兼業やクロスアポイントメント制度の活用をする場合のガイドラインなども紹介しておりますので、ご参照いただくとともに、わかりやすい情報が発信できるように引き続き工夫してまいりたいと考えております。
 

Q2. 基幹教員を掛け持ちする大学数について上限はあるのか
 

 A2. こちらについては資料34ページの注釈にも書いておりますように、大学数について定量的な上限はありません。しかしながら、適切な教育研究活動等が行われるよう教員のエフォート管理には注意が必要と考えております。
 

Q3. 基幹教員に関して各大学は情報公開が求められるのか
 

 A3. 資料36ページにあるように基幹教員数、それから個々の基幹教員の学位、教育研究業績、経歴、所属、教育課程の編成その他の学部の運営等への参画状況、担当科目といったことなどについて公表することが考えられるところです。

 私からの説明は以上とさせていただきます。

   
 
 

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